教育ニュース
中学に「情報・技術科」ができる。それでも家でやることは変わらない
中央教育審議会の作業部会が、中学校に「情報・技術科」を創設し、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加える方針をまとめた。生成AIの活用も盛り込まれる。福島のワークショップで見た光景を思い出した。
発表の内容
何が決まったか
中央教育審議会の初等中等教育分科会・教育課程部会に「情報・技術ワーキンググループ」という会議がある。そこが8月4日付で取りまとめ(案)を出した。
要点は3つだ。
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中学校に「情報・技術科」を創設する。 いまの技術・家庭科(技術分野)を組み替える形になる
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小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を加える。 小学校には現在、情報活用能力を育てる場所が教科として存在しない
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高等学校の情報科まで、小中高を通した体系として整理する
生成AIについては、偽情報や誤情報の拡散が「フィルターバブルやエコーチェンバー等と相まって、価値観を偏らせ社会の分断を誘引・拡大し、民主主義を危険にさらすおそれがある」という書き方をしている。教科をつくる理由として、産業人材の話と並んでこれが挙げられているのは、少し意外だった。
情報・技術ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正(文部科学省、2026年8月4日)
実施時期は、取りまとめ(案)の本文では確認できなかったので、本文では触れていない。告示の段階でもう一度書ける。
出典 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/118/mext_02418.html
前田のコメント
ここからは私の話
3月に福島でサイコロ道場のワークショップをやった。20人ほどの子どもが集まって、そのうち上のテーブルを私が担当した。
大学受験生もいた。13×17×19×8。苦しそうに見えるが、実はカンタンなやり方がある。彼は最後の一の位をいい加減に出して、答えとした。そしてすぐにスマホを取り出して、自分の答えが合っているか確かめようとした。
もう会わないかもしれないから余計なことかもしれないと思いつつ、言うことにした。
「いや、待ってくれ!答えをすぐにスマホで確認するにはデメリットもある。きっちり考えきって本当に自信があるのか? まあこれくらいだろうと思って答えを出してないか?」
顔を赤らめてうつむいてしまった。
あのとき私が気にしていたのは、スマホそのものではない。考えきる前に外に答えを求める癖のほうだった。生成AIの話も、結局は同じところに行き着くのだと思っている。
道具が賢くなるほど、考えきらないまま答えにたどり着けてしまう。そして本人は、答えが出たのだから考えたつもりになる。
教科ができても、土台は変わらない
取りまとめ(案)を読んでいて、いちばん引っかかったのはここだった。
社会にあふれた情報の中から真に必要な情報を吟味し、適切に取り扱う力を養う。そう書いてある。
だが、吟味するというのは、要するに読むということだ。
書かれていることを正確に読み取り、書かれていないことを勝手に足さず、そのうえで自分の考えと突き合わせる。これができない子が、教科が増えたからといって偽情報を見抜けるようになるとは、私にはあまり思えない。
教科書はすべて日本語で書かれている。算数も理科も社会も、問題を理解するには、まず文章を正確に読めなければならない。それは新しい教科ができても変わらない。
だから、家でやることは変わらない。音読と暗算をやる。それだけだ。
ただし、一つだけ気になる記述がある
取りまとめ(案)は、小学校の現状についてこう書いている。
「教科等に明確な位置付けがなく、授業時数や指導内容の具体が示されていないため、地域や学校による差が大きい」
情報モラルやメディアリテラシーについても「学校による取組の差が大きい」とある。
これは、役所が自分たちの課題として正直に書いた一文だ。そして保護者にとっては、いまの時点で学校ごとに差があると認めている、ということでもある。
新しい教科ができるのは数年先だ。その差が埋まるのも、さらに先になる。待っているあいだの数年は、それぞれの家庭のものになる。
とはいえ、慌てて何かを買う必要はないと思っている。プログラミング教室に入れなければ、という話でもない。
うちの子が、読んだことを自分の言葉で言い直せるか。答えを出す前に、少し考える時間をつくれているか。見るのはそこでいい。
新しい教科ができると聞くと、何か対策をしなければと身構えてしまう。私も昔はそうだった。だが、これまでの経験でいえば、あとから効いてくるのは、たいていもっと地味なことのほうだ。
情報活用能力という言葉は、まだ手ざわりがない。数年後、教室でどう立ち上がってくるのか。それを見てから、また書こうと思う。